医学典範

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歴史的には、精神医学において「メランコリア」は精神的状態(心の病気)のみならず
肉体的な状態(脳の病気)をも指し、鬱状態は外因性、内因性、心因性など共通した原因別に
分類されており、古くは躁うつ病(現代でいう双極性障害)をも包含した。現代の
精神医学では原因別ではなく、現れている症例別に操作的に分類されている。

イブン・スィーナー(アヴィケンナ)は、『医学典範』(1020年代)で
神経精神医学を扱い、メランコリアを含むさまざまな神経精神医学的状態を詳述している[6]。
彼はメランコリアを、気分障害のうち鬱の性質が強いものの述べ、患者は疑い
深くなることがあり、ある種の恐怖症を悪化させることもあるとしている[7]。

『医学典範』は12世紀にラテン語に翻訳され、近世までヨーロッパで広く使われた。
ウィリアム・シェイクスピアの『ハムレット』の登場人物である憂鬱な
デンマーク王子ハムレットのような憂鬱な人物であった。この時代の文化的なムードを
示す文学的な成果には、ジョン・ダンの後半生の死に取りつかれたような作品群がある。

その他、作家トーマス・ブラウン卿(Thomas Browne)の作品や、神学者ジェレミー・タイラー
(Jeremy Taylor)の死生観やメメント・モリを追う著作群もこの時代の
メランコリアへの傾倒を象徴するものである。